端整な顔に残された赤く腫れあがった痣(アザ)がそのことを物語っている。

「オラシオン…」

 ガブリエルは小さく彼の名を呼んだ。

「…ガブリエルか」

 牢屋の片隅にいたオラシオンが微かに動いた。

 ガブリエルは恐々と牢屋に足を踏み入れた。

 履いている靴のかかとが、カツンと甲高い音を立てる。

「俺は、もう疲れた」

 ガブリエルは、オラシオンの言葉にハッとした。

 その言葉はまるで、生きることを投げ捨ててしまったような、そんな言い方だったのだ。

「死なないでね」

 ガブリエルはオラシオンの傍まで歩いていき、早口に言った。

「ガブリエル…?」

「お願いだから、死なないで」

 ガブリエルは言いながら、オラシオンの傷の具合を確かめる。体中の傷のほとんどが、赤黒いぶよっとした痣だった。

 切り傷や打撲もあるが、痣がほとんどだった。

「…酷い…」