店を出たオラシオンは、目的地へ向かった。

 オラシオンが一人で出かけたのには理由があった。

 それは、知りたいことがあるからだった。もちろん、自分のことや国のことではなく重臣や世話係、ガブリエルにさえ知られたくないことだった。

 目的地は城下町の片隅の、人目につかない店だった。

 古びて継ぎはぎだらけの青い暖簾(ノレン)をくぐる。

「店主はいるか」

 店主が雇ったと思われる奴隷に尋ねた。

「はい、旦那様は奥におられます」

 オラシオンは奴隷の礼を言い、店の奥に入った。

 奥の部屋は、奴隷がいた部屋と違って埃だらけで蜘蛛の巣も張っている。

「ローグ、頼みごとがあるんだが」

 オラシオンの言葉に、部屋の奥にあるデスクから本の山が落下した。山の奥から、頭の薄い小さな老人が現れた。

「あぁ、王家の小僧か。よく来たな」

 嗄れ声が答える。

「すまないな。オマエにしかできない頼みだ」