ホッカ村の一日は夜明け前から始まる。
村人たちが朝食と身支度を済ませ、村が活気づいてくる頃にようやく雄鶏が夜明けを知らせるのだ。
幼い頃からそんな生活をしていれば、自然と早起きの習慣は身につくものだが、どうもガブリエルには身に付かない。
極度に、朝に弱いのだ。それに比べ、兄であるフィオーレは早起きだ。
六歳の頃には、早起きの生活に慣れていたらしい。
朝に弱いか否かも、似ていない兄妹の違いの一つだ。
「ガブリエル、ほら起きなよ」
耳元で聞こえるフィオーレの低い声でガブリエルの一日は始まる。
「今何時?」
「五時。皆起きてるよ」