「あ…、ちょっとトイレ行ってくる…」
Lサイズのコーラを飲んだ千紗は 女子トイレに逃げるように向かった
その姿を 何も考えずに見送った
『…』
心が無になる
最近 1人になると多くなるんだ
どうしてなのかな?
そう思っている間も 病気は体を蝕んでいる
忘れちゃいけない
綾の背中には “死”と言う文字が隣り合わせなのだ
別に恐くはない
だって この世界に思い残すことなんてないのだから――
何もかも諦めた
大好きだった ダンスも
大好きだった 運動も
大好きだった 人も
すべて諦めたんだ
だから 今更思うことなんてないんだ
欲を言えば お葬式で「あの子は、いい子だった」など言われてみたかったが 最近では それこそどうでもいい
綾が考えることは 自分の“死”しか なくなっていた
『――…ぅ…』
急に喉が焼けるように熱くなった
腹の下から 込み上げてくるような感覚――
気を失うか失わないかの狭間――
――…吐き気だ