拓斗の声が 綾の耳に入って行く――
それに 目を押さえつけられているような感触――
きっと彼が 涙を零す寸前だった綾の目を塞いでくれたのだろう――
どんな様子かわからないけど 誰かの足音が 遠ざかって行くのがわかった…
そして ゆっくりと綾の視界に光が差し込んでゆく…
最初に飛び込んできたのは 拓斗の横顔――
「大丈夫か…?」
コクリと頷く 綾
そうゆうと 拓斗は「よかった――」と言い 微笑を送ってくれた――
『拓斗、本当に…ありが……と――』
一瞬の出来事だった――
時が止まったようだった――
それに すごい風が 綾と拓斗の周りを舞った――
『――…っ』
なんて言えばいいんだろう…
すごく温かくて――
すごく優しい――
だけど力強くて――
なんとも言えない…
「俺は…、おまえを泣かせない」
拓斗は 綾の体を力いっぱい包み込んでくれていた…――