“頬を触られている”



それだけでも鼓動が速くなるのに 新一は1番優しい笑顔で「まったくい、かわいいなー」なんて言ってくる





『せ、先輩には彼女がいるじゃないですか!!!そんな言葉…』



照れ隠しのあまり 彼女のことを口に出してしまった


これが自分を傷付けることだと わかっているのに――





「あいつには、もうちょっといいこと言ってるから。心配しないで」


『…そうですか。例えば?』

聞きたくない内容なのに 言葉が溢れ出してしまう

結局 自分が辛くなるだけなのに――






「うーん…、“お前しか、考えられねぇ”とか?…あぁ、なんか改めて思うと、結構恥ずかしいな――」



頬を桃色に染める新一

はにかんだ笑顔が いつも以上に胸を湿らせる




ずっと 自分だけの新一の表情だったのに 今は違う









そう思うと 胸が潰されそうなくらい苦しくて 辛いんだ――


涙が滲む前に 溢れ出る前に――

『私…、ちょっと…化粧室に…』









――席をはずした