賑わう広い店内
ビスケットなどの甘い香りと コーヒーのほろ苦い香りが 渦を巻いている
最近 地元で人気になってきている喫茶店で 新一と綾はゆっくり寛いでいた
『こんなにご馳走してもらって…いいのですか?』
気まずそうに綾が問うと 新一は頬杖をつきながら
「気にしないで。今日は俺のおごり★」
――と言いながら ニッコリと微笑んだ
今にも 彼の後ろにひまわりが咲きそうだ
――デートなんて 久しぶりだ…
おごってもらったウインナ―コーヒーを口に運ぶ
その間 窓の外の人波を眺める新一を 見つめてしまった
彼を見ていると 吸い込まれそうなんだ――
胸が 頬が 全身が熱く溶けてしまいそうで…
それに 1度見つめてしまうと ずっと目が離せなくなる…
――先輩…
「あ、そうだ。なぁ綾」
『ひゃい!!!』
急に綾の方に目を向けたので 彼女の声が裏返ってしまった
――…は、恥ずかしい…
まるでユデダコになった気分だった
“目の前に穴があるなら 潜ってしまいたい”と本気で思ってしまった
綾は 机に顔を伏せた
最初は目を真ん丸にしていた先輩も 「ははっ」と噴きだしていた
綾は 顔をあげて頬を膨らました
あきらかに“自分は怒っています”と言うかのように――
「ごめん、ごめん。てかさ――」
新一は 膨れた綾の頬をしぼませ
「綾は怒ると、すぐ膨れていたよなー」