――23…か


窓から2列目の前から3番目…

綾の新しい席が決まった


夏の日差しと吹き抜ける風が心地よい席――



綾はつい頬杖をついてしまった


「水野さんだよね?」


窓側の男子が声をかけてきた



『ぇ…あー、はい』


「はは、俺ねー水野さんの隣になってみたかったんだー。“綾ちゃん”って呼んでいい?」



人を巻き込むような話しかたで どんどん綾に近づこうとしている


「携帯持ってる?メアド交換しよーよ」





女たらしとでも言うのか?


とにかく綾が苦手なタイプで 対応に悩んだ



『いや…その…』


「いいでしょー。ね?綾ちゃーん」




嫌がっているのがわからないのだろうか?



綾のことなんかお構いなしに メアドを交換しようとする








すると…――



「嫌がってるんだろ?諦めろよ」





綾が振り返ると 後ろの席の人が 足を組みながら睨んでいた


鋭い眼光――


茶髪の髪――


どこか見覚えのある顔立ち――





「は?綾ちゃんが嫌がってわけないだろ!そーだよね、綾ちゃん!!!」


自信たっぷりに綾に問う隣人


そのときの目付きは メアドを聞いてきたときの優しそうな瞳とは 全くの別物だった





『あー、私も…ちょっと嫌だったんだー…、ごめんね…』


断るときの綾は なんだが目があちこちに泳いでいた







すると 隣の人は 二度と目を合わせてくれなくなった――



相当自分に自信があったらしい

それなのに傷物にされて 腹を立てたんだろう――


しかし 綾にはどうでもいいことだった