胸が熱くなった



焼けるように熱いのではなく――

陽だまりのような温かさ――


息を呑んだ




夢だと思った



大好きだった人が…――

いや違う


大好きな人が…――目の前にいる





『…せんぱ…』



「綾だー!久しぶりー!!!髪伸びたなー。大人っぽくなったねー!」


卒業式と変わらない新一――


変わったとすれば 背丈と顔立ち――


中学のときとは 全然違う





幼さが消えて 男らしくなった




なのに あのときからの優しさは 少しも汚れていない


綾とは全然違う

認めたくなかったけど 全く違う世界の人のようだった



『先輩も、大人っぽくなったですね』


「そうかな?…てか、あれから何年ぶり?」






『2年です――』




即答だった





忘れるはずがない


忘れられるはずがない


“大事なものを切り捨てた日”





死んでもはっきり覚えていたい日だ


桜が舞う卒業式のことを 曇ることなく覚えている

綾は あれから1日たりとも 新一のことを忘れたことはない







「2年かー…。速いな…」



『…』











「ところでお前、好きな人とはどうなったんだ?」


『ぇ…?』





「ほら、卒業式のときに言ってたじゃん!“好きな人が出来たから…。”って」


『ぁ…あぁ…』










――そんな人いない

――私の胸には


――いつでも先輩が輝いていたから