アイドルにキュン☆!?

ーside風雅ー



「只今ー」




俺は小さな声で家に入った。



ガチャ…。




そして、ドアをゆっくりと閉めてから、リビングへと向かった。




今は夜中の2時。




妹が起きているか起きていないかの境目の時間だ。





まぁ、お袋はもう、完全に就寝しているけどな(笑)。




俺の家族はみんなで、病院の隣にある家に住んでいる。




まぁ、俺はデビューすると同時に家から出て行ったけどな。




俺は前と全然変わらないなぁ、と思いながら辺りを見渡した。





ガチャ、俺がリビングに入ると、うたた寝をしている妹がいた。






「只今」



俺はうたた寝をしている一番下の妹にそう言うと、妹は、




「あれっ?おにぃー?帰ってきてたの?お帰り」





一番下の妹の支保がテレビのリモコンを持ち、チャンネルを変えながら言った。






「お前、明日学校なのに起きてても大丈夫なのか?」





俺が心配しながら言うと





「明日は振り替え休日で休みだよ。それより、おにぃーはあれを考えてうちに帰ってきたの?」





支保がミディアムショートの少し茶色かかった髪を揺らしながら言った。





「あー、そうか。うん。俺も決めなきゃいけないときだなって」





俺がそう言うと、支保はテレビの画面を見ながら、





「あたしは、おにぃーのやりたい事をやればいいと思う。お義母さんは酷いよね、おねぇーが嫌いだからっておにぃーに継がせようとするなんて」





そう。



お袋は本当の母さんでは、ない。




支保を産んだ時に体の弱かった母さんはこの世を去ってしまったのだ。





そして、6年前、俺がまだ学生だった頃に再婚したのだ。





そして、お袋は俺のもう一人の妹の李保(リホ)の事を好いていない。




何故かって??



李保は今年で20歳になるのだが、幼い頃かなりのお母さん子だったからだ。





だから、兄妹で一番お袋とは仲良くなれなかったのだ。





そんな、お袋も李保を好いていない。





しかも、昔の母さんを見ると、目元や、雰囲気が凄くそっくりだった。






「李保は?」




そう言うと、支保が




「おねぇーは家で閉じこもってる。母さんへの反発じゃない?」





やっぱりそうか。





李保も俺と一緒で小さい頃から父さんの背中を見てきた。





俺が仕事をしている父さんがかっこいいと思ったのと同時に李保も思っていたのだ。





だから、小さい頃は良く二人でどっちが跡を継ぐか、喧嘩になったくらいだ。






「俺、ちょっと李保の所に行ってくる。まだ起きてるかな??」





俺が、そう言うと支保はうとうとした目を擦りながら、




「起きてると思うよ。あたし寝る」





そう言うと、支保は上へと消えて行った。





李保は、俺のことを恨んでいたりするのかな??



あんなに、父の背中を見ていたのに、俺は芸能人になるという夢へ歩いて行った。





俺は、無言で李保の部屋の前に来てしまった。





こんこん。




俺がノックをすると、




「……誰?支保??」





中からそんな声が聞こえてきた。





「俺、風雅」




そう言うと




「おにぃー!?ちょっと待って」




その声と共に、ドアが開いた。





「おにぃー?どうしたの??てか、帰ってきてたんだ?」




李保が不思議そうにドアから顔をのぞかせた。





「うん。只今。李保に話したい事があるんだけど」




俺がそう言うと、




「まぁ、入んなよ」




そう言って中へ入れてくれた。



李保の部屋は相変わらず、本だらけだ。



しかも、綺麗に整頓されている。




「あー、うん」




そう言って、俺はそんな本だらけの部屋へと足を踏み入れた。




「おにぃー、どうしたの?」




李保が不思議そうにそう言った。





「お前、病院継ぎたいんだよな」




俺は率直に李保に伝えた。




「うん。あたしはお父さんの背中を見てきた。あたしはお父さんみたいに人の病気を直していきたいと思う」





やっぱり、李保の思いは強いだよな。




俺も、李保に継いでもらいたいと思っている。






「俺もお前に継いでもらいたいよ」




そう言うと、李保は少し照れていて





「お父さんより最もいい医者になるもんねっ!女だからってなめんなっ!」





そう意気込んで言って。




「李保は女だっけ?」




俺がいつもみたいにそう言うと




「女だし!」




そう言って笑いあった。