悔しくて山寺さんにお酒を頼んだけど、それすら「菜月には出すな」と蓮に止められてしまう。
……私は何しにここに来たんだろ……?
気分が悪いからもう帰ろうか、と席を立ち上がりかけると、蓮が私の腕を掴んで一言言った。
「ようやく酔い潰れてくれたな」
「え?」
「小柳さん。あんだけ強い酒を飲んでりゃ、暫くは意識は戻んねぇだろ」
見ると小柳さんはいい感じにできあがってしまっていて、もう言ってる事が支離滅裂だ。蓮と間違えて山寺さんを捕まえて好きな男性像をくどく語っている。
「蓮、最初からこうするつもりで……?」
「こうでもしないと、俺にしつこく絡んでくるだろ、小柳さんが。ゆっくり二人で話もできねーし」
そう言って蓮は私の目の前に[rape blossoms]を差し出した。
「……ありがと……」
お礼は言えたけど、でもまだ素直にはなれない。
小柳さんに嫉妬しちゃってるんだ。
蓮は私の、なのに。あんまり他の女の人とベタベタしたり私を除け者にして話したりしないでほしい。
「まだ機嫌直んねぇの?」
そう言いながら、蓮はお酒の横に5センチぐらいの小箱も一つ、そっと置いた。
「……何、これ?」
「開けてみ」
促されてラッピングもしてないその箱の蓋を開ける。箱にデザインされているのは最近人気が出てきた有名ブランドのロゴだった。
「……キーケース……?」
ブランドのシンボルマークの三日月がダークブラウンの革の上に箔押ししてある、キーケース。
「これ、プレゼント?なんで……」
誕生日でもないし、何かの記念日……?
こんな物を貰う理由はいくら探してもみつからない。
「キーケースの中見てみろよ」
蓮に言われて、キーケースの中が少し膨らんでいる事に気がついた。
中には真新しい鍵が一本付けられている。
「合鍵。俺のマンションの。今日、あれから急いで作ってきた」
照れたのか、蓮は後ろを向いてお酒の瓶を拭く振りをしている。
「……俺がいない時でも、それ使って部屋に上がっていいから。ほんで、たまに飯を作っといてくれるとすげぇ嬉しい……」
〔私は特別なんだ〕って、認めてくれたんだよね……?
わざわざ私の為に合鍵を作ってくれたんだよね……?
私だって、嬉しいよ!
「ありがとう!大事にする。無くさないから!」
「無くされちゃ困るっつの」
思わず蓮と顔を見合わせて笑ってしまった。
私も蓮のために、もっと料理の勉強をしよう。そのためにはお母さんに……。
「ああっ!!!」
「んーだよデカい声出して」
眉をひそめた蓮の方を見て、あわあわと口を開閉させた。
お母さんとお父さんの事、すっかり忘れてた!
「昨日、私、無断外泊しちゃったじゃん?でね、お父さんとお母さんが目茶苦茶怒ってるらしくて……」
蓮の顔色を伺いながら、次の言葉を言う。
うう、蓮はどんな反応するんだろ?知るのが恐いよぅ……。
「一度、その彼氏を家に連れてきなさいって言ってるの。……あの、蓮が暇な時とか、じゃなかったらそのまましらばっくれちゃう、とか……」
しらばっくれられるのはちょっと辛いけど。
でも連絡しなかったのは私のミスだし……。
「そんな無責任なことできるわけないだろ。分かったから。親父さん達が都合がいい日を聞いて教えろよ。挨拶に行くから」
「……でもっ」
「社会人なんだから、ある意味のけじめだろ。心配すんなって」
蓮が腕を伸ばして私の頬を撫でた。
大好きな指がゆっくり下がって私の唇に触れる。
「……続きはお前の両親に挨拶してからな」
蓮の熱に浮かされた私は、喋る気力もなくただこくりと一つ、頷いた。
……私は何しにここに来たんだろ……?
気分が悪いからもう帰ろうか、と席を立ち上がりかけると、蓮が私の腕を掴んで一言言った。
「ようやく酔い潰れてくれたな」
「え?」
「小柳さん。あんだけ強い酒を飲んでりゃ、暫くは意識は戻んねぇだろ」
見ると小柳さんはいい感じにできあがってしまっていて、もう言ってる事が支離滅裂だ。蓮と間違えて山寺さんを捕まえて好きな男性像をくどく語っている。
「蓮、最初からこうするつもりで……?」
「こうでもしないと、俺にしつこく絡んでくるだろ、小柳さんが。ゆっくり二人で話もできねーし」
そう言って蓮は私の目の前に[rape blossoms]を差し出した。
「……ありがと……」
お礼は言えたけど、でもまだ素直にはなれない。
小柳さんに嫉妬しちゃってるんだ。
蓮は私の、なのに。あんまり他の女の人とベタベタしたり私を除け者にして話したりしないでほしい。
「まだ機嫌直んねぇの?」
そう言いながら、蓮はお酒の横に5センチぐらいの小箱も一つ、そっと置いた。
「……何、これ?」
「開けてみ」
促されてラッピングもしてないその箱の蓋を開ける。箱にデザインされているのは最近人気が出てきた有名ブランドのロゴだった。
「……キーケース……?」
ブランドのシンボルマークの三日月がダークブラウンの革の上に箔押ししてある、キーケース。
「これ、プレゼント?なんで……」
誕生日でもないし、何かの記念日……?
こんな物を貰う理由はいくら探してもみつからない。
「キーケースの中見てみろよ」
蓮に言われて、キーケースの中が少し膨らんでいる事に気がついた。
中には真新しい鍵が一本付けられている。
「合鍵。俺のマンションの。今日、あれから急いで作ってきた」
照れたのか、蓮は後ろを向いてお酒の瓶を拭く振りをしている。
「……俺がいない時でも、それ使って部屋に上がっていいから。ほんで、たまに飯を作っといてくれるとすげぇ嬉しい……」
〔私は特別なんだ〕って、認めてくれたんだよね……?
わざわざ私の為に合鍵を作ってくれたんだよね……?
私だって、嬉しいよ!
「ありがとう!大事にする。無くさないから!」
「無くされちゃ困るっつの」
思わず蓮と顔を見合わせて笑ってしまった。
私も蓮のために、もっと料理の勉強をしよう。そのためにはお母さんに……。
「ああっ!!!」
「んーだよデカい声出して」
眉をひそめた蓮の方を見て、あわあわと口を開閉させた。
お母さんとお父さんの事、すっかり忘れてた!
「昨日、私、無断外泊しちゃったじゃん?でね、お父さんとお母さんが目茶苦茶怒ってるらしくて……」
蓮の顔色を伺いながら、次の言葉を言う。
うう、蓮はどんな反応するんだろ?知るのが恐いよぅ……。
「一度、その彼氏を家に連れてきなさいって言ってるの。……あの、蓮が暇な時とか、じゃなかったらそのまましらばっくれちゃう、とか……」
しらばっくれられるのはちょっと辛いけど。
でも連絡しなかったのは私のミスだし……。
「そんな無責任なことできるわけないだろ。分かったから。親父さん達が都合がいい日を聞いて教えろよ。挨拶に行くから」
「……でもっ」
「社会人なんだから、ある意味のけじめだろ。心配すんなって」
蓮が腕を伸ばして私の頬を撫でた。
大好きな指がゆっくり下がって私の唇に触れる。
「……続きはお前の両親に挨拶してからな」
蓮の熱に浮かされた私は、喋る気力もなくただこくりと一つ、頷いた。