まだ早い時間なら、ホテルにでも部屋をとって夜景を見ながらレストランで食事した後…なんて考えたりもしたんだけど、19時にホテルのフロントに行っても部屋なんてとれねぇよ。


かと言って、菜月との初めての夜をラブホなんかで過ごしたくない。


大体ラブホなんてただヤるだけの目的で使うだけだろ?菜月をそんなに軽々しく扱いたくない。


第一今日はそんな気分じゃないし。菜月を大事にしながら、でも早く触れ合いたい。



この後をどうしようかと口数も少なに悩んでいると、菜月が不思議そうに俺の顔を覗きこんだ。


「どうしたの?さっきの診断結果が気になった?」


……まぁ、あれのせいと言えばそうなんだけど。あれのせいで《体の相性》を意識しまくってしまったしな。


「92パーの相性に浮かれてんだよ。で、さ。この後どうする?晩飯食いに行く?」

「そう言えばお腹空いてきたかも。でも、昼も夜も外食してたらお金が勿体なくない?」

「そりゃそうだけど……」


いや待てよ。ここで『菜月の手料理食いたい』っつったら、イイ感じに俺のマンションに誘えるんじゃね?

それ最高じゃん!



「じゃあさ、俺んちに来て、菜月が何か作ってくれる?」


然り気無く言ったつもりだけど、内心は緊張してバクバクいってる。

これで断られたら俺、立ち直れねーな。


「……でも、伊織さんとかご両親がいるんじゃ…ないの?」

菜月が俯いてモジモジと爪を弄りながら呟いた。



そっか、菜月は俺が一人暮らししてんのは知らないんだっけ?



「それは大丈夫。俺は一人暮らししてるし。クラブの店長なんて夜の仕事してるから、実家に住んでれば何かと気を使うんだよな。夕方に家を出て明け方に帰ったら親も良い顔しなかったし」


親父なんかは「夜の仕事なんて辞めちまえ!」なんて未だにグダグダ煩ぇし。一人で暮らすのが気楽でいい。


「蓮の住んでるとこ、ここから遠いの?」

「車で20分ぐらいだな。うちに来る?」



じっと菜月を見つめること数秒。緊張する長い一瞬の後、……菜月はこくんと頷いた。


あ、俺の部屋散らかしてなかったっけ?


帰ったら速攻で片付けないと。