「上映スケジュールを調べてないんだけど、何が上映されてるのか分かんない。どんな映画を演ってるの?」


こんな奴にはタメ口でも良いよね。というか、昨日のクラブでもタメ口たたいてたしね、私も。


「姉さん達は人気俳優が主演の恋愛ものを観に行くんだってさ。あとは…」


海野さんはそう言いながらスマホで上映スケジュールを調べだした。


「洋画のファンタジーものと邦画のサスペンスもの。後はヒューマンドキュメンタリー。アニメは論外だろ?」


いや別に何でも良いけどね。


ただ、伊織さん達二人の邪魔はしたくないから別行動の方が良いかも。



それならサスペンスものでも観ようかな。


「サスペンスものってどんな話だっけ?テレビドラマがヒットして映画になったやつじゃなかった?」


まだスマホを弄る海野さんを見て映画の内容を聞いた。


仕事柄遅番があるからそのドラマは観れてなかったけど、結構話題になってたから私もタイトルだけは知っている。


「ああ、タイトルが[灰色の檻]ってやつ。天才ハッカーと仲間が某国のテロに立ち向かう話。それ観る?」

「海野さんもそれ観るの?」


特別な感情を抱いていない相手と、一緒に映画を観るのは気疲れしそうなんだけどなぁ。


海野さん、伊織さん達の方に行ってくんないかなー。


「……あのさ、『海野さん』って呼ばないでくれない?姉さんの名字も『海野』だし。俺の事は『蓮』でいいから」

「蓮さん、って呼べばいいの?」


なんだよ、一々注文が多いな、この人。呼び方なんてどうでも良くない?


意外に神経質な性格なんだろうか。


「……呼び捨てでもいいんだけどさ」


蓮さんがぼそりと呟いたその一言は、敢えて聞かないふりをした。


だって、なんで呼び捨てにしなきゃいけないのか、その理由が分かんないんだもん。