お色直しを終えて新郎新婦が再入場すると、たちまち撮影会が始まった。


皆が涙ぐみながら、携帯やカメラに今日という日を収めていく。



……多分、それぞれの記憶の中にもこのデータは消えることなく、色褪せることなく、残っていくことだろう。



皆が心行くまでシャッターを切り終えると、ようやくキャンドルサービスが始まった。


暗闇に照らされる蝋燭の灯火が震災の当日を思い出させたのか、また啜り泣く人も何人かはいた。


停電に見舞われ、暗闇に閉ざされたあの日を乗り越えてきた人々の目には、この小さな光はどう映って見えるのかな。


これから先を照らし出す新しい希望になってくれればいいのにな……。



思わず私も涙腺が緩みかけた時、そっと誰かに手を繋がれた。


「……早く来すぎた?」


……蓮だった。


「ううん。キャンドルサービスが終わったらケーキ入刀。蓮の出番はその後だよ」


そっか、と呟いて蓮はまた私の手を握る指に力を込めた。


「……あの新郎サン、すんげぇイイ顔してるよな」

「男の目から見てカッコいいってこと?」


確かに吉田さんの旦那さんも整った顔立ちはしてるけど、体育会系というかどう見てもガテン系の体格してるよね。


「違う。迷いがないっつーか、真っ直ぐな人柄なんだろうなって。人に好かれるタイプだろ。だから友達も多いみたいだし」

「……うん、多分それ当たってる」


そうじゃなければ、散り散りになったご友人達がこんなにたくさん来てくれないよね。


蓮も、吉田さんご夫婦には何か感じることがあるのかな……?



「……入刀終わったな。じゃ、俺準備するから」


スッと絡めた指を離して、蓮が持ち場にスタンバイした。


披露宴会場の一角に設置された、カウンターの前に立つ。


照明が落とされると場内がざわめきだした。


アナウンサーが笑いを含んだ声で今から始める特別サービスの説明をする。




『只今から皆様にご覧頂きますのは、当式場から吉田様ご夫妻へのスペシャルプレゼントでございます。フレア・カクテルショー、まずは皆様でお楽しみ下さいませ』



私と蓮から、吉田さんご夫婦への感謝の意味を込めたプレゼント。


この結婚式で、蓮にショーをやって貰うこと。




蓮に吉田さん達の事を話したら何故か蓮も吉田さん達に興味を持ったらしい。


それならお金は私が出すから、フレアショーをやってくれない?プレゼントしたいんだってダメ元で蓮にお願いしたら、無償でやってくれるって言ってくれた。


後は吉田さんご夫婦が喜んでくれればいいんだけど……。