「海野蓮さん、あなたは北斗菜月さんを妻とすることを望みますか?」


……菜月に出逢ってからずっと、そればかりを願っていた。


「はい、望みます」



「順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、夫として生涯の愛と忠実を尽くす事を誓いますか?」


「はい、誓います」

「 北斗菜月さん、あなたは海野蓮さんを夫とすることを望みますか?」


菜月はあまりの展開に、ついていけないのか呆然としている。

司祭に「北斗菜月さん?」と呼び掛けられて、ハッと我に返ったようだ。


「……はい、望みます」


菜月の声は小さくて、頼りない。


それだけ、まだ俺に蟠りがあるんだろうか……。


「順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、妻として生涯、愛と忠実を尽くすことを誓いますか?」




……頼むから……!





「……はい、誓います!」



そう応えた菜月の声にも顔にも、既に迷いが全くなくて。


俺を、選んでくれたんだ……。


それが、こんなに幸せだなんて。



「私は、お二人の結婚が成立したことを宣言致します。 お二人が今、私達一同の前で交わされた誓約を神が固めて下さり、祝福で満たして下さいますように」


司祭が参列者に向かって告げる。


「ご列席の皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を神が慈しみ深く守り、助けて下さるよう祈りましょう」




そして司祭は神を讃え、俺達二人を祝福するよう神に祈った。



祝詞の後、司祭が俺に告げる。

「Now, you may kiss your bride」



俺は菜月のヴェールを上げ、紅潮した菜月の顔を両手で挟んだ。


「……今まで苦労させたけど、今度からは必ず幸せにしてあげる。だから、お前も俺の側にいて?」


……言いたかった事が、ようやく言えた。


だけど、菜月。菜月はどう思ってるの?


「『死が二人を別つまで、一生ずっと一緒にいて下さい』」


その言葉を貰えただけでも充分だ。



恥ずかしいとかそんな気持ちはどっかに行った。


俺は参列者の前で、菜月に甘いキスをした。





誓いの言葉はキスで封印された。



これでもう、二度と約束を違えるような真似は、しないから。