……メイクを施されながら、まさか…とは疑っていた。


中井さんが態々ナイトフェアのフレアの担当を俺と替わってくれたのも、菜月に対してのけじめをつけて来いって事なのか、と。


半信半疑で式場のチャペルに向かうと……。その前に佇む、ウェディングドレスを着た菜月。


大胆に胸元が開いているのに、ヴェールがそれを隠していて、清純なユリみたいに清らかだった。

菜月は俺がここにいることに驚いたようで、指を指してただ口をパクパクさせている。

せっかくのドレスが台無しだろ。もっと雰囲気が出るような顔して見せろよ。



そんな菜月に近づいて手を取り、心に決めた。


それを口にするのは、もう少し後で、だ。


「菜月。……似合ってる」


本当は今ここでキスしたいけど、それも後にとっておく。


「扉を中から叩いて合図をしますので、合図をされたら扉を開きます。そしたら入場して下さい」



本番、か。


見ている客にとっては模擬の結婚式かも知んねーけど、俺にとっては一生に一度のチャンスなんだ。


俺の誕生日に、たった一度のチャンスを俺は潰した。


菜月が歩み寄ってくれたのに、俺がそれを潰した。


追い詰めて、傷つけた。



だから……。



今まで以上に愛しいんだ。菜月のことが、愛しくてたまらない。





扉が中から叩かれる。



新郎新婦の入場、だ。





新郎は俺で、新婦は菜月。


二人でスポットライトに照らされた赤い道を、腕を組み、ゆっくりと歩く。



祭壇の前に、二人で並んだ。




司祭が神の代理人。



見ている全ての人々は俺達の証人。



厳かに、式が始まった。