フェアが来週に迫った今日も、私達は区境の方に来ていた。
今日は吉田さんの隣の家に用事があったからだ。
その家は平野さんって言うんだけど、息子さんとその彼女さんが平野さんの家で同棲してる家だ。
そこにもフェアの案内を持って行ったけど、まだ確約は貰っていない。
「行けるかどうか、分かんないなぁ」って、息子さんにははぐらかされたりしてるし……。
でも平野さんのお母さんは結婚式をあげてもらいたいみたいで、カップルでフェアに行ってくれば、と一緒に薦めてくれてる。
このままじゃ埒が明かないから、今日は小柳さんを連れて再度アプローチ。
「……フェアではチャペル式の模擬結婚式の他、模擬披露宴もございます。披露宴では本当の式に使うコースのハーフコースをご用意致します」
「でもなぁ。仕事が休めるか分かんないんだよね」
息子さんは、まだ結婚とかは考えてないみたい。でも付き合いはじめて3年は経つって言ってたけど。
3年も彼女と実家暮らしって、何だか甘えてる気がしなくもない…と思うのは私だけかな?
「平野様方は同棲していらっしゃるとの事ですが、私共もこういう仕事をしておりますので分かるんですよ。…つまり、もし赤ちゃんが出来てからでは式は益々挙げにくくなる…という事なんですね。そして、同棲していらっしゃるのであれば、いつ妊娠なさっても不思議ではないんですよ。それで挙式出来なかったご夫婦が、たまにいらっしゃるんです」
「ああ、そうだよな。妊娠か……。確かにおかしくねーよな」
「はい。それであれば、今はお二人ともお仕事をなさっていて、多分経済的にもまだ少し余裕があるうちに式を挙げられた方が良いのでは……?と、私共も考えまして。本日はチケットもお持ち致しましたが、2枚で宜しいですか?」
「いや、……やっぱ親達の分もくれる?やっぱり先の事は考えなきゃ駄目だよなぁ……」
さすが小柳さん!優柔不断な平野さんの息子さんをその気にさせちゃったよ!
「では、今日は持参した2枚だけ置かせて頂きますね。残りのチケットは明日お持ち致します。本日はお忙しいところをありがとうございました」
チケットを手にした息子さんは、何やら考えてる風で上の空で挨拶を返した。
ガラス戸の玄関を開けて、小柳さんと外に出る。
「ありがとうございました。私じゃあの息子さんを乗り気にさせられなくて……」
小柳さんにぺこりと頭を下げてお礼を言った。
「ブライダルフェアが近い時期に営業に回る時は、確約を貰ってからチケットを持ってくるんじゃなくて、チケットは必ずペアで用意しとかないと。それから、ああいう優柔不断なタイプの彼氏は、具体的な将来の事を話してやると乗り気になるんだよね。将来的にノープランのカップルが妊娠してからじゃ、結婚式なんて無理でしょ?」
「はい。勉強になります」
「よろしい。これで菜月は2組をフェアに動員だね。吉田さんと平野さん。……まずいな、私の方がまだお客さんに確約貰ってないし」
「付き合います」
戦力にはならないくせに、と笑って二人で小柳さんのお客さんの家に向かった。
今日は吉田さんの隣の家に用事があったからだ。
その家は平野さんって言うんだけど、息子さんとその彼女さんが平野さんの家で同棲してる家だ。
そこにもフェアの案内を持って行ったけど、まだ確約は貰っていない。
「行けるかどうか、分かんないなぁ」って、息子さんにははぐらかされたりしてるし……。
でも平野さんのお母さんは結婚式をあげてもらいたいみたいで、カップルでフェアに行ってくれば、と一緒に薦めてくれてる。
このままじゃ埒が明かないから、今日は小柳さんを連れて再度アプローチ。
「……フェアではチャペル式の模擬結婚式の他、模擬披露宴もございます。披露宴では本当の式に使うコースのハーフコースをご用意致します」
「でもなぁ。仕事が休めるか分かんないんだよね」
息子さんは、まだ結婚とかは考えてないみたい。でも付き合いはじめて3年は経つって言ってたけど。
3年も彼女と実家暮らしって、何だか甘えてる気がしなくもない…と思うのは私だけかな?
「平野様方は同棲していらっしゃるとの事ですが、私共もこういう仕事をしておりますので分かるんですよ。…つまり、もし赤ちゃんが出来てからでは式は益々挙げにくくなる…という事なんですね。そして、同棲していらっしゃるのであれば、いつ妊娠なさっても不思議ではないんですよ。それで挙式出来なかったご夫婦が、たまにいらっしゃるんです」
「ああ、そうだよな。妊娠か……。確かにおかしくねーよな」
「はい。それであれば、今はお二人ともお仕事をなさっていて、多分経済的にもまだ少し余裕があるうちに式を挙げられた方が良いのでは……?と、私共も考えまして。本日はチケットもお持ち致しましたが、2枚で宜しいですか?」
「いや、……やっぱ親達の分もくれる?やっぱり先の事は考えなきゃ駄目だよなぁ……」
さすが小柳さん!優柔不断な平野さんの息子さんをその気にさせちゃったよ!
「では、今日は持参した2枚だけ置かせて頂きますね。残りのチケットは明日お持ち致します。本日はお忙しいところをありがとうございました」
チケットを手にした息子さんは、何やら考えてる風で上の空で挨拶を返した。
ガラス戸の玄関を開けて、小柳さんと外に出る。
「ありがとうございました。私じゃあの息子さんを乗り気にさせられなくて……」
小柳さんにぺこりと頭を下げてお礼を言った。
「ブライダルフェアが近い時期に営業に回る時は、確約を貰ってからチケットを持ってくるんじゃなくて、チケットは必ずペアで用意しとかないと。それから、ああいう優柔不断なタイプの彼氏は、具体的な将来の事を話してやると乗り気になるんだよね。将来的にノープランのカップルが妊娠してからじゃ、結婚式なんて無理でしょ?」
「はい。勉強になります」
「よろしい。これで菜月は2組をフェアに動員だね。吉田さんと平野さん。……まずいな、私の方がまだお客さんに確約貰ってないし」
「付き合います」
戦力にはならないくせに、と笑って二人で小柳さんのお客さんの家に向かった。