昨日も蓮からはメールが届いていたけど、今日の仕事帰りに開いたメールには目を見張った。
―――――――――――――――――――――
今から会いに行く
―――――――――――――――――――――
それだけの短い一行。
えっ、ちょっと待ってよ!
いきなり来られても困惑しちゃうんだけど。
せっかく蓮の事を忘れようと、慣れない営業に没頭しているのにどうして今更会いに来るとか言うの?
蓮には真優さんがいるんでしょ?
それとも真優さんが、もう浮気したとでも?
あの人がする事なら今なら何を聞かされても驚かないけど、私が進んで聞きたい訳じゃないよ。
タイムカードをついて皆に挨拶をすると裏口からこっそり出ようと自動ドアを潜った。
駐車場を横切りバス停に向かう筈の私の足が、誰かに無理矢理止められる。
そこにいたのは、見間違う筈もない愛しい人。
蓮に、しっかりと手を掴まれていた。
「菜月に、逢いたかった。聞きたい事があるんだ」
聞きたい事って、何を?
「今さっき、山影に全部聞いた。あの日、お前と山影が何を話してたのか。何で、お前はその話を全部言わなかった?」
……言えるわけ、ないでしょ?
「それに、あの女はお前に何を吹き込んだ?何か言ってきたんだろ?」
……真優さんが蓮に関して言っている事は、蓮も同意していることでしょ?
「あの女がお前に話した事は、恐らく全部嘘だ。だから、あの女が何を言ったのかを話して、菜月?」
優しく諭すように蓮が耳元で囁く。
できるのならば言ってしまいたい。
でも……。
「あの夜俺が抱いてたのは昔馴染みのオンナだ。キャバ嬢で、昔はよく枕営業に付き合ってた。菜月に出逢ってからは関係なかったけど、鬱憤が溜まっててあの夜は酔いに任せてヤっちまった」
「……真優さんじゃ、なかったの……?」
「あの馬鹿女がお前に何を吹き込んだのかは知らねぇが、俺があの馬鹿女とどうこうなる関係にはならない。絶対に」
蓮の瞳には迷いがない。泣いて紅く濁った目ではない。
澄んだ透明な瞳。
「……信じても、いいの……?」
腕を引かれたと意識した瞬間には、私の体は蓮の胸の中に収まっていた。
それと同時に蘇る記憶。
蓮が、他の女の人の上に跨がって獣のように体を貪っている、あの姿。
思い出した時には私は蓮の胸を突き飛ばしていた。
「……ごめん…。今でも思い出して辛いの。真優さんの事とは関係なしに、蓮が他の女の人を抱いてる姿が目に焼き付いて離れない……」
「菜月っ……!」
蓮も辛そうな顔で私を見る。
「……ごめん。気づいてやれなくて、追い詰めて、傷付けて。本当に悪かった。だから!」
「……やっぱり私達、距離を置こう?あの記憶が蘇る度に辛いんだ、私……」
蓮は辛そうな目で私を見てるけど、その目にはなぜか迷う気配は感じない。
「待つよ。菜月の傷が癒えるまで。信用を取り戻せるまで。ずっと待つから」
もう一度、今度は蓮は、私を優しく抱きしめた。
――俺は、今でもお前の事が好きだから―――
耳元でそう囁いて。
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今から会いに行く
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それだけの短い一行。
えっ、ちょっと待ってよ!
いきなり来られても困惑しちゃうんだけど。
せっかく蓮の事を忘れようと、慣れない営業に没頭しているのにどうして今更会いに来るとか言うの?
蓮には真優さんがいるんでしょ?
それとも真優さんが、もう浮気したとでも?
あの人がする事なら今なら何を聞かされても驚かないけど、私が進んで聞きたい訳じゃないよ。
タイムカードをついて皆に挨拶をすると裏口からこっそり出ようと自動ドアを潜った。
駐車場を横切りバス停に向かう筈の私の足が、誰かに無理矢理止められる。
そこにいたのは、見間違う筈もない愛しい人。
蓮に、しっかりと手を掴まれていた。
「菜月に、逢いたかった。聞きたい事があるんだ」
聞きたい事って、何を?
「今さっき、山影に全部聞いた。あの日、お前と山影が何を話してたのか。何で、お前はその話を全部言わなかった?」
……言えるわけ、ないでしょ?
「それに、あの女はお前に何を吹き込んだ?何か言ってきたんだろ?」
……真優さんが蓮に関して言っている事は、蓮も同意していることでしょ?
「あの女がお前に話した事は、恐らく全部嘘だ。だから、あの女が何を言ったのかを話して、菜月?」
優しく諭すように蓮が耳元で囁く。
できるのならば言ってしまいたい。
でも……。
「あの夜俺が抱いてたのは昔馴染みのオンナだ。キャバ嬢で、昔はよく枕営業に付き合ってた。菜月に出逢ってからは関係なかったけど、鬱憤が溜まっててあの夜は酔いに任せてヤっちまった」
「……真優さんじゃ、なかったの……?」
「あの馬鹿女がお前に何を吹き込んだのかは知らねぇが、俺があの馬鹿女とどうこうなる関係にはならない。絶対に」
蓮の瞳には迷いがない。泣いて紅く濁った目ではない。
澄んだ透明な瞳。
「……信じても、いいの……?」
腕を引かれたと意識した瞬間には、私の体は蓮の胸の中に収まっていた。
それと同時に蘇る記憶。
蓮が、他の女の人の上に跨がって獣のように体を貪っている、あの姿。
思い出した時には私は蓮の胸を突き飛ばしていた。
「……ごめん…。今でも思い出して辛いの。真優さんの事とは関係なしに、蓮が他の女の人を抱いてる姿が目に焼き付いて離れない……」
「菜月っ……!」
蓮も辛そうな顔で私を見る。
「……ごめん。気づいてやれなくて、追い詰めて、傷付けて。本当に悪かった。だから!」
「……やっぱり私達、距離を置こう?あの記憶が蘇る度に辛いんだ、私……」
蓮は辛そうな目で私を見てるけど、その目にはなぜか迷う気配は感じない。
「待つよ。菜月の傷が癒えるまで。信用を取り戻せるまで。ずっと待つから」
もう一度、今度は蓮は、私を優しく抱きしめた。
――俺は、今でもお前の事が好きだから―――
耳元でそう囁いて。