酔いなんか吹っ飛んだ。

早く朝になれば良いのに。


菜月が投げ棄てたケーキは、大事に持って帰って冷蔵庫に入れた。



リコを起こすのは可哀想だから、そのまま寝かせておいた。

だけどリコと一緒に寝ようなんて、もうちっとも頭にない。




多分、菜月が俺にくれるはずだったネックレスを握り締めて夜を明かした。



溢れてくるのは、菜月への謝罪と自責の念ばかりだ。


なんでこんな馬鹿な事をしたんだ。

いつまでも意地を張った挙げ句に取った行動がこれかよ。




空が白み始めると、俺はリコをタクシーに乗せてアパートへ帰した。



それから顔を冷水で洗って、髭も剃らず昨日着た服もそのままで車に飛び乗った。

行き先は菜月の家。



直接逢って話したい。逢って謝りたい。


「プレゼント、ありがとう」って一言を言いたい。



菜月の家に着いて、インターフォンを鳴らす。


朝の6時だけど、非常識だとか今はそんなの関係ない。


眠そうに「ふぁーい」と出てきたのは、兄貴の笥乃さんだ。


「朝早くにすみません。菜月はいますか!?」


よれよれの俺を笥乃さんは怪訝そうに見たが、「菜月なら急ぎの仕事が入ったとかで、もうでかけたけど?」と俺に告げる。


「……マジっすか……」

避けられてるよな、やっぱり……。


「なんかあったの?菜月も慌てて家を出たみたいだし?」

「まあ、ちょっとね……」


笥乃さんは勘が良い人だから、隠せる自信もないけど、そう誤魔化しておいた。


「なら今日は帰ります。朝から騒がせて、すみませんでした」


力なくその場は立ち去ったものの、まだ諦めた訳じゃない。


菜月の仕事が終わるのを待ってから、そこで捕まえる。


今度はもう、離さない。