八年前。



俺が施設に入ってからは、誰一人とも口をきかなかった。


平田さんですらかなり手こずったと思う。




何を聞かれても何も言わないんだから。



『お腹すかない?』


『・・・・・・』




『嫌いなものとかある?』


『・・・・・・』




終始無言で何の意思表示もなかった。




それでも平田さんは俺を見捨てたりせず、毎日話しかけてくれた。



六歳ながらに、そんな平田さんにいらだつこともあった。




放っておいてほしいと思うこともあった。


でもある日平田さんが言った一言で、俺は初めて返事をした。