次の日は光一さんがアパートに来てくれる約束で、私は一緒には食べられないかもしれないと分かっていても二人分の夕飯を用意する為に食材を選ぶ。
 たまに俊哉にも会うけど、お互い笑顔で「お疲れ様」なんて言って、私達が以前夫婦だったのが嘘のような空気が流れるようになった。

「何にしようかな……揚げ物はタイミングが難しいし。結局煮込み物になっちゃうなあ。でも、光一さんはわりと煮物が好きだから、それでいいか」

 こんな独り言をいいながらレンコンとかこんにゃくを買って、自分の食事を作る時よりは明らかにメニューを詳しくイメージしている。
 光一さんに「鈴音の料理は最高だね」なんて言ってもらえるのを想像して、ちょっと鼻歌が出てしまいそうな私。
 普段の夕飯は適当な駅弁とかで終わらせているに違いないから、せめて私と一緒の夕飯ぐらいは栄養のあるものを食べて欲しい。
私ってやっぱり母性が強いのかな。成長を気にかけるお母さんの気持ちと似ている気がする。

 きちんと食べてるの?
 ちゃんと眠れてるの?
 こんな言葉がつい出てしまいそうで、それは抑えている。

 口うるさい恋人はあまり可愛くないと思うから。