城崎さんとは、あれから話をすることはなかった。
彼が店に顔を出すのは、だいたい週に3回くらい。
だけど店にいるときは、ほとんど事務室にいるし、帰りのミーティングに少しの間向かい合うくらい。
でもアルバイトのあたしが、彼と話すことなんてなかった。
《疲れじゃないんだったら、何か悩んでることとかあるのか?》
「え?あ、ううん!そんなのないよ!」
電話越しから、心配する明の声が聞こえる。
あたしはこれ以上、明に心配をかけたくなくて、無理やり明るくふるまった。
「ほんと大丈夫!ちょっと卒論の内容がせっぱ詰っちゃって、常に考えちゃってるだけだから」
《あー、卒論も追い込みの時期だもんな》
「そーなの。これをちゃんと提出しないと、卒業もパーだからね」
話を大学へと脱線させ、なんとか明には深く突っ込まれずに済んだ。
もう…
いい加減忘れなくちゃ……。