「……何もなかったことにしようと思ったんだ」
「え……?」


城崎さんは、やっと口を開いた。


「金曜の夜の出来事は、酒の勢いだと…。最低なことをしたと思ったけど、お前にも付き合っている奴がいるし、それが一番いいことだと思ったから……」
「……」


ハンドルに手をかけたまま、前を向いて話を続ける。
あたしはドアにかけていた手を外し、城崎さんへと向き直った。


「なのに帰り、あんな目で見るから……」


そう言って、城崎さんはあたしを見た。


その瞳に、やっぱりあたしは弱い。

今まで大事にしてきたすべての物が、頭の中から消えてしまいそうで……。