気にしているのは自分だけ。
意識しているのは自分だけ。
あの日あった出来事は、お酒がまわって浮かれて、つい行ってしまったマチガイ…。
だからもう忘れよう。
あたしと城崎さんは、ただの仕事の上司とアルバイトだ。
「ふぅ……」
すっかり肌寒くなってきた夜、あたしは仕事の疲れを感じながら店を出た。
月曜の夜は、さすがに遊んで帰る人も少なく、みんな足早に駅へと向かっている。
あたしはなんだか早く歩く気はしなくて、人よりも少しだけゆっくりのペースで歩いていた。
その時……
「おい」
ふいに腕をつかまれた。