「あたし……まだ思い出せてない……。
 貴方のこと……」

「ああ」

「だからどうしたらいいのか分からなくて……」


そう言うと、城崎さんはあたしの体を反転させ、じっと顔を見つめた。


「だからどうした?」
「え…?」
「記憶が戻ってないからって、何か問題あるのか?」


見つめる瞳から目を逸らせなくて、どんどんと心拍数が上がっていくのが分かった。


この人といると……
自分が自分じゃいられなくなる……。


「夕菜」

「…っ」


大きく心臓が飛び跳ねる。

やっぱり、彼の声には魔法があるみたい。


「どう…しよう……」


何も思い出せていないのに……
まだ、好きという感覚さえ分かっていないのに……



「貴方が……欲しくてたまらない……」



理性を失う。