「ほら」
着いた場所は、明の部屋だった。
明かりをつけた部屋は、あたしの知っている明の部屋とほとんど変わっていなくて、少しだけ安心した。
「おばさんには連絡しな」
「うん……」
あたしは携帯を取り出すと、お母さんに電話をかけた。
お母さんは心配してたけど、明の家にいると言うと、少し複雑そうに返事をして食い下がった。
「はい」
「…ありがとう」
電話を切ると同時に、差し出されたコーヒー。
だけどいつもと違っていた。
コーヒーを入れられたマグカップは、あたしがずっと使っていたものではない。
白のシンプルなもの。
よく部屋を見渡すと、飾ってあったはずの写真たて。
あたしが使ってた鏡や化粧水一式。
スリッパやそのほかの食器。
全部がなくなっていた。
あたしの居場所が…
なくなった気がした……。