「今、おばさんから電話があって……。
夕菜が帰ってこないって心配してたぞ」
「……」
気が付けば、時間は10時を回っている。
前のあたしなら、10時を過ぎて帰ってこないのは当たり前だった。
だけど記憶がない今だからこそ、何も言わずに帰ってこないことに、お母さんが心配したんだろう。
「ほら、帰ろう。送ってくから」
決して触れることなく、あたしの顔を覗き込む明。
違う…
そんなふうに接してほしいんじゃなくて……
「……明の家に…帰るっ……」
あたしは明に抱きついた。
「何言って……」
「あたしの記憶だと、今日は明の家に行く日なのっ…。
半年の間で何が起きたか分からないけどっ……でも変わっている生活が怖いよっ……」
「夕菜……」
明はそれ以上何も言わなかった。
そしてあたしの手をひくと、一つの場所に向かった。