この信号を渡って、右へ曲がればお店に着く。
もどかしい…
早くして……。
彼への気持ちが、どんどん大きくなっていく気がした。
だけど……
「……」
全ての思考が停止した。
信号は青に変わり、あたしの周りの人が動き出す。
だけどあたしだけ、足がその場に凍り付いてしまったように動かない。
見えてしまった。
信号を待っている間。
目の前を曲がる一台の車。
ない記憶の中で、でもどこかで見たことのあるようなネイビーの車が通った。
そしてそこに乗っていたのは
城崎さんと……
この前病院に来た女の人だった。
よみがえる……
ぼんやりとした二人の笑顔……。