もう一度会えば、分かるような気がした。

記憶とか
好きという確かな想いとか

そんなの関係ないよ、って。


もう一度あの瞳に見つめられれば、何もかもがどうでもよくなってしまうんじゃないかって……。


だからもう一度…

「夕菜」と彼に名前を呼んでほしい。


「ひろ…と……」


声に出してみた彼の名前は、思った以上に愛しくて、早く彼に会いたいという気持ちを大きくさせた。


時間は夜の9時30分。
お店はもう閉まっているから、帰ってしまっている可能性もある。

だけどそんなこと、いちいち気にしていられなかった。


「早くっ……」


店にたどり着く前の交差点。

もどかしい想いをかかえながら、あたしは赤信号を待っていた。