「はぁ……」


お店から少し離れたカフェで、あたしは一人コーヒーを飲んでいた。

なんとなく、まだ家に帰る気はしなくて
気が付くと、2時間近くもこの席に座り続けている。


グラスの中のコーヒーは、残り3分の1となったところで、とっくに氷と混ざり合っていて、
あたしは肩肘をつきながら、窓から見える人波をぼーっと眺めていた。


考えてしまうのは城崎さんのことばかり。

今、あたしの脳みそは、ほぼ城崎さんで占めている。


「………あいたい…」


無意識に出た言葉だった。

だけどこれは、嘘偽りのない本心。


「あいたい……会いたいよ……」


理由は分からない。

好きだから?

そうじゃない。
好きとかそんな言葉に言い表せるような理由なんかじゃなくて……


「……っ…」


気が付くと、あたしは店を飛び出していた。