「買っちゃいます?」
「うーん、どうしようかなー。だってもう社割きかないんでしょ?」
「そりゃまあ……。でもでも!買ったらあたしとお揃いですよ!」


営業トークなのか、フレンドリートークなのか、エミちゃんはぐいぐいとあたしにその商品を勧める。
ちょっとだけ悩んだけど、確かに可愛いのは事実だったので、あたしは結局エミちゃんの押しに負けて、色違いで買うことにした。


「そういえば……」


会計をしながら、エミちゃんが小声で話し出す。
「何?」と耳を傾ければ、エミちゃんは一度店の控室のほうを見た。


「城崎さん。例の好きな人とうまくいったみたいですよ」
「……え?」


その名前を聞いて、全神経に電流が走った。


「ほら、前に話したじゃないですか。アリサ先輩が告ったら、好きな人がいるってフラれたって……。
 そしたらこの前、カナ先輩が、城崎さんが誰かに電話してるのを見たみたいで……。聞こえた内容からして、明らか彼女っぽい人だったみたいですよ」

「……」


ドクンドクンと、心臓が大きく高鳴ってる。

その相手が、誰かなんか分からない。

だけど……


きっとそれはあたしだ……。