明の部屋の前。
あたしは一度大きく息を吸い込んだ。


さっき携帯を見たら、明はもう帰宅しているというメールが来ていた。
だからこの部屋の向こうには、もう明がいる。


あたしは意を決して、扉を開けた。


「おかえりー。遅かっ……」


扉が開いて、笑顔で迎えてくれた明。
だけどあたしの隣にいる裕翔を見ると、途端にその笑顔が消えた。


「……久しぶりだな」
「……」


明はそのまま背中を向け、部屋に戻る。
一言、

「入れば」

とだけ残していった。


あたしと裕翔は、一度頷き合うと、部屋の中へ入った。