「夕菜……」
「やっ……」


裕翔は、水槽に触れるあたしの手に、自分の手を重ねた。

振り払おうと思っても、その手をぎゅっとつかんで離さない。


「本当に俺のことが嫌いなら、ちゃんと目を見て言って。
 もう一度……この手を触れながら……」


水槽に映る裕翔の顔が切なげで、
触れている手はとても熱くて……


「ず…るいよ……そんなこと言うのは…ずるい……」
「なんで?嫌いなら言えるだろ」


そう。
言えば終わる。

たとえ思っていなくても、次の言葉を吐けばきっと裕翔はもうあたしに近づかない。

今だけ嘘をつけば……



あたしはゆっくりと振り返った。

見上げた先にいるのは、暗闇の中で微かな光に照らされた裕翔。


あたしを見つめる瞳。

強くつかんだ手。


引き寄せられる……心……。



………体………。



「……名前……呼んで……」



もう…理性なんかいらない。