「お前の顔なんか丸見えだ」


言われて気が付いた。

水槽に微かに映る、あたしと裕翔の姿。

泣きじゃくるあたしに、複雑そうに笑う裕翔。


「こっち向けよ」
「……だ…め……」


なんとか出せた声は、情けないくらいの涙声だった。


「せっかく……あたしだって忘れようとしてるのに……」


裕翔への想いを忘れたかった。
裕翔の存在を忘れたかった。


そうでもしないと、あたしはこの先一生、明を愛することは出来ない。


「お前には無理だよ。俺を忘れるなんて」


水槽越しにあたしを見つめる裕翔。
逸らしたいのに逸らせない。


「なん……で……」


「だって俺が、お前を忘れるなんて無理だから」


「…っ……」


そう言って微笑んだ裕翔。


だ…め……
これ以上は……もう……。