「……ば…か……明はバカだよっ……」


ポロポロと涙が溢れ出てきた。

痛々しい左手を見て
明への情がどんどん大きくなっていく。


「こんなあたしのことを好きなんて……バカだよっ……」

「ほんと…バカだよな……。
　あんなふうに裏切られて…フラれているのに……」


本来なら、死ぬほど恨まれても仕方のないほどの仕打ちをしたはずだった。

だけど明は、あたしを嫌うことも憎むこともなく
ただあたしを求めただけ。


「でもしょうがねぇじゃん」


明はそっとあたしを抱き寄せる。



「俺は呆れるくらい、夕菜のことが好きなんだからさ」