たとえあの時、イラッときても、帰ることはできた。
むしろ、苛立つ相手だったら、一緒に飲みに行くことのほうが嫌なはず。

だけどあたしは、城崎さんについてきてしまった。

別に彼は、無理やりあたしを誘ったわけでもないのに……。


「あの……運命の人って…信じます?」
「運命?」
「はい……。あたしは…運命とか、占いとか、そういうのってまるで信じてないんです」


質問をしておきながら、自分のことを話す。
城崎さんは、黙ってあたしの話を聞いていた。


「でも…今の彼は、そういう運命とかの話をするのが好きで……あたしも…彼となら、運命の人とか、信じてみてもいいかなって思うようになったんです」


なんで急に、こんな話をしたかったのか分からない。
だけどなんとなく、あたしは城崎さんにぽつりぽつりと話し続けていた。


「きっとこの世界の中で、彼ほど好きになる人はいない。
 そして彼以上に、あたしを想ってくれる人はいないだろう……って。
 だからこれが、運命の相手……っていうものなんじゃないかな…って……」


そこまで話し切ると、城崎さんは口づけていたグラスを置いた。