「……夕菜?」


指輪をしまい終わって、ベッドの片隅に座っていると、裕翔があたしの名を呼んだ。


「ごめん。起こしちゃった……?」
「いや。もとからよく目を覚ますほうなんだ」
「そっか」


裕翔も上半身を起こすと、あたしの頬に触れた。


「……明のこと…考えてたのか……?」
「……ちょっとね。あたし、ちゃんとお別れを言えなかったから…」


確かに「もう付き合えない」とは言った。


だけど理由も何も話さずに来てしまった。

きっと明は、自分がなんでフラれてしまったのか分かってない。


「今度ちゃんと話さないと……」
「俺もついて行こうか」
「ううん…。ちょっとしばらくは、明にはあたしたちのことは伏せておきたいから……」
「………そうだな…」


ずるい、と思われても、さすがに明と別れて裕翔を選んだとは、すぐには言えなかった。

きっとそれを知ったら、明はすごく傷つく。


もう少し落ち着いて…
明にあたし以上にふさわしい人が現れるまで……。