「私…痴漢のこと思い出したくなくて、言えなかった…。お母さんに心配かけちゃった。ごめんね」
「いいのよ。いいのよ茉莉亜謝らないで」
お母さんは目にうっすら涙を浮かべて私を抱きしめてくれた。
私は一人じゃなかった。
一人で抱え込むなんてしちゃいけないことだったんだ。
「じゃ!俺帰りますんで♪」
「清川先生!何のおもてなしもできず申し訳ありませんでした…」
「気にしなくてもいいっすよ!まりあちゃん、また明日駅で待ってるからな!」
「えっ…先生…」
「大丈夫大丈夫!木下が来ても俺が守るから。なんたってまりあちゃんの担任だしな!」
先生は笑顔で家を出ていった。
「清川先生ってとても生徒思いのいい人なのね。お父さんが心配してたけどそんなの見た目だけ。やっぱり人間中身ね。ほら、茉莉亜お茶でも飲みましょ?」
「うん」
…もしかして
先生は気づいていたのかな。
木下君と私のこと。
なんとなくだけど。
そんな感じがした。
だって気付いてなかったとしたら
私が泣いただけで生徒を殴るなんてありえないもん。
まだ木下君が何かしたっていう証拠もないのに。
そうだ!
先生、木下君殴っちゃったんだよね。
…大丈夫かな。
辞めちゃうなんてことないよね…?