「ソファ座ってて。お茶入れるよ」
私は黙ってソファに座った。
それから木下君は高そうなティーポットとカップを2つ。
1ピースずつのショートケーキを持ってきてくれた。
「はい、どうぞ」
私は小さくお辞儀をする。
「ごめんね。怖がらせちゃったよね」
木下君はティーポットから紅茶をカップに注ぎながらそう言った。
「俺、反省してる。藤本さんが俺の元から逃げようとした時さ、『ああ…怖がらせちゃったんだな』って思って。逃がさないとか言ってごめんね?今何かしようなんて思ってないから安心して」
私の前に紅茶の入ったカップが置かれた。
…もしかしたら私は
とんでもない勘違いを?
あのメールだけで私、木下君は"怖い人"って思っていただけなの?
「ごめんなさい。私木下君にひどいこと…」
「ぜ、全然!藤本さんが誰かにとられたらって思ったらなんか…焦っちゃって」
「本当ごめんなさい」
「いいんだよ!ほら紅茶冷めちゃうよ。飲んで飲んで!」
「ありがとう」
私は砂糖をスプーンで2回すくって紅茶の中に入れた。
私たちの間には時計の針の音と、紅茶を混ぜる金属製の音だけ通り抜けた。