連れていかれた場所は大きな家の前。
「ここ、俺の家なんだ」
どうやら木下君の家らしい。
新しい家の香りがただよっている気がする。
「入ろう」
「わ、私…」
「何?」
「…嫌です」
「は?なんて言った?」
早く逃げ出したい。
この手を振り払って駅に向かって走れば
キヨ先生じゃなくても誰かに会える。
だから…。
だから私は賭けに出た。
「私…木下君の家に入りたくない!!」
思い切り手を振りかざす。
木下君の力が少し弱まった気がした。
今だ…!!
私は力の限り手を自分の方に引いた。
するっと木下君の手から私の手が離れる。
「藤本さん!!」