「はぁ…はぁ…っ」


どれくらい走ったんだろう。


辺りはもう真っ暗だった。
今が何時なのかもわからない。



「…先生」


私はもう先生の名前しか呼べなかった。

お母さんもお父さんもお兄ちゃんもすごく大事。
美紀や祐樹だってすごく大事。





だけど、今の私にとって…



隣にいてほしいのは先生だった。




「本当に涙って…枯れることないんだね。喉はこんなに…カラカラなのに」



私は誰も通らない道路を一人とぼとぼと歩いた。

…ここどこだろう。






「もう帰り道も分かんないや」


気づいた時にはもう知っている建物なんてなかった。


どこを見ても新しい。




「もしもこのまま先生と引き離されるくらいなら…」


死んでもいい。

先生のことだけ考えて死んでいきたい。



そう思った。