劇の最中、佐藤君は台本にない言葉をあたしに向けてきた。



「ジュリエット様、僕は一目見たときから貴女の虜でした。決して手の届く方ではないと思っていたけれど、今こうして共に時間を過ごせていることが、本当に奇跡としか思えません。どうかお願いです。僕のこの愛を受け取っていただきたい」



佐藤君はあたしの唇に唇を重ねてきた。


台本の中にはない動き。

しかも本当のキス。




頭の中は真っ白だった。






「どうか、どうか受け取ってください」



そこにいたのは…
ロミオではなく佐藤竜也君だった。






「…ああ、ロミオ。私は貴方を愛しています。永遠に貴方と共にあります。私はもうすでに貴方の愛の虜だというのに───」




あたしと佐藤君はお互いを支えあうように抱き合った。


…佐藤君の体温、胸の鼓動、耳にかかる吐息。



ロミオとジュリエットは悲しい最後を遂げたかもしれない。


でも、あたしと佐藤君の恋は絶対に終わらせない。



あたしは佐藤君の耳元でそっと囁いた。


「佐藤君が、好き」