「じゃあ最後の通し始めまーす!役者さんは準備いいですか?」


美紀が台本を持ちながらそう言った。


役者が口々に返事をする。


「…まりあちゃん!!」



私は近くにいた先生にもたれかかった。


「茉莉亜!?」


美紀が私の名前を呼び、走って近づいてきた。

他の人たちもざわめき始める。




「痛い…です」


私はお腹を懸命におさえた。


「おいおい、明日本番だろ?こんなんで大丈夫か…?」


先生が私を支えたまま美紀に目線をうつす。




「…」


美紀は心配そうな顔をして私を見つめていた。



「あの…」


そんな時、佐藤君が口を開いた。


「もしも、藤本さんが明日舞台に立てないのなら…仲村さんにジュリエット役を頼みたいです」








私たちの計画。


それは、ロミオとジュリエットの劇を佐藤君と美紀でやらせること。


…もちろんお腹に痛みなんて全然ない。

嘘をついたことはすごく美紀に対して罪悪感は残るけど…。