「はい」



たっぷり間をあけて電話に出ると


『やぁ、はじめまして。と言うべきかな』


機械か何かで声を変えてあるのだろう、それはボイスチェンジャーで聞くような不快な雑音で聞こえた。






「スネーク」





俺が問いかけると、響輔が目を開き、ドクターに掴まれていた手を乱暴に振り払った。


「何を……」


とドクターは不審そうに俺たちを眺めていたが


「しっ!」


俺が唇に手を当てると、押し黙った。


俺は一旦電話を耳から離すと『録音』ボタンを押し、再び電話を耳に当てた。


『龍崎 朔羅は無事かい?』


スネークはあざ笑うように……突如聞いてきて俺は目を開いた。


「お前!!朔羅に何したんや!!!!」


思わず怒鳴ると、響輔がゆっくりと立ち上がった。


『何をした―――か……


それに関しては申し訳ないが今はまだ種明かしができない。


だがしかしそうなったきっかけの……ヒントをあげよう』


スネークの言葉遣いはボイスチェンジャー越しだと言うのに、丁寧で上品さも漂っていた。


高い教養がある男だ、と言うことは分かる。


どっちだ―――


大狼とドクター……どっちの男だ―――


だけどもしかしたらあの二人じゃないかもしれない。とにかく喋り方だけで人物を想像するのは難しいことだった。


スネークは喉の奥でくすくすと不快に笑い、それが俺の神経を逆なでした。





「ごちゃごちゃうっせぇよ!!そのヒント言うんを早よ、言えや!!」


俺が電話口に怒鳴ると






『ドクターが使った点滴。あの中身をすり替えたのは私だ。



彼は何も気づいていない。



あの薬は私が開発した薬でね―――すでに実験で成功が立証されている。


だから黄龍にも使用してみたのさ。


さらに実験のときより改良を加えて出来たのが今回の新薬だ―――



君の抗原で―――黄龍が目覚めるように作り直した』



抗原――――何の抗原なんや―――


こいつ一体何を言ってやがる。




『抗原は―――君の何で反応するのかは今の私には分からない、




君の血液か、或は精液か―――あるいは唾液か―――…』






言われて俺は思わず口を押えた。








そう言えば






朔羅とキスを――――少し前にした。