プチ鬱――――……


なるほど、それもあるのか。


いつもよりけだるそうな表情とか、俺には妙に色っぽく映ったが、こいつはこいつなりに悩んでるんだな―――


ここになってようやく気付いた。



悩む女ってのは



色っぽいもんなんだな―――






図書館の外でセミの鳴き声がみぃみぃと聞こえる。


緑の木々が窓の外で揺れ、影が暑さを物語っていたがこの中は別世界に居るみたいに涼しい。


「これも違うね」


と長い睫を伏せながら言い、川上が立ち上がると花柄のミニスカートの裾がエアコンの風で揺れた。


川上はノースリーブの肩を、寒そうに撫で


俺は思わず川上の肩に手を持って行こうとした―――……ところでやめた。


冗談でもどうせ殴られるのがオチだし、うっかり肩なんて抱いたら「浮気者!」と責められそうだ。


少なくとも今の俺が川上の肩を抱いたら―――それだけで「浮気」ととられても仕方ない状況と心情だ。


やめて正解だな。





俺は川上の隣に並んで



ただエアコンの風から彼女を守るように



横に居た。




「龍崎くんて背が高いよね。


そんなにすぐ近くに居ると







響輔さんが隣に居るみたい」





川上はうっすら笑った。



あっそ。


まぁたあいつかよ―――


まぁそれでも



「別に今だけならあいつの代わりでもいいよ」



川上に聞こえるか聞こえないかぐらいの声でちっちゃく言ったが、川上にはしっかり届いていたようで






「無理だよ。



無理―――



だって響輔さんの代わりなんて誰にもなれない。



龍崎くんの代わりも誰にもなれないんだよ―――」






俺の代わりも―――







「だからさ、たった一人の龍崎くん……



危険なことばかりしてないで朔羅のために、自分を大事にしてあげてね」






川上――――……