無言で水の事故や事件を調べること三十分。


無音の図書館での調べものは眠気を誘う。


今朝も早くからバイトが入ってたし、疲れてるってのもあるな。俺が大きな欠伸をすると


向かいの席で川上も口元に手をやり


「ふわっ…」と欠伸。


まるで小鳥のようなしぐさに俺が笑うと、


「何よ、龍崎くんの欠伸が移ったんだもん。大体何十年も前の事故を調べろって方が無理なんだよ。


眠くなるのも当然」


川上が目を吊り上げて俺を睨んでくる。


「見つけられたらご褒美に響ちゃんとデートさせてやるよ♪」


「い、いいよ!そんなことっ」


川上は真っ赤になって手を振り否定。


響輔のこと…諦めたのか?新しい男の出現??


待て待て、川上。響輔には絶対川上みたいな女の方が合ってるんだって。


「遠慮すんなって」


「遠慮とかじゃなくて……大体強引にそんなことしてほしくないし。


あたしとデートしたい、って思ってくれなきゃ意味がないの」


川上は新聞の紙面を目で追いながら口を尖らせる。


「そんな悠長なこと言ってらんねぇぜ?ライバルなんてぐいぐい来てるんだから」


俺の何気ない言葉に川上が新聞から目を上げる。


しまった…


と思ったが遅かった―――


だが川上はそれ以上何かを問いただすことなく


「あたし、今プチ鬱なのー。分かる?乙女の憂鬱が。


何で千里や進藤先輩に頼まなかったのよ」


と、さりげなく話題を変え、またもぶつくされながら新聞に視線を落とした。