結局俺は朔羅と喧嘩したことは伏せて、川上を図書館に促した。
響輔と約束した……何年か前、盛岡で起きた水の事故を調べるために来ているわけだが。
「調べてほしいのは、何十年も前に起きた水の事故のことだ。
分かってるのは盛岡ってことだけで、年代と詳細な場所は不明だ」
「盛岡だけ!?年代と場所は不明って……そんなの無理だよ!」
川上は調べる前から弱音。
「まぁまぁそう簡単に諦めるなよ。夕飯奢ってやるから」
と宥めるのに必死な俺。
それでも一応調べてくれる気持ちはあるのは、棚に掛かった地方新聞をいくつか手に取る。
「ねぇ盛岡って…千里のおばさんの実家があるところでしょう?
朔羅もこないだ気にしてたけど……一体何があるって言うの?」
川上が不思議そうに聞いてきて、俺は苦笑い。
川上は朔羅と違って頭の回転が速いし記憶力もいい。だからこの人選は最適だったと思うが―――
余計なことを詮索されたら厄介だな。
「知らない方が身のためだぜ?」
俺は曖昧にごまかしていつくかの新聞を手に取った。
川上は納得がいってないようだったが、俺の言葉に効果があったようで黙って新聞を取り出した。