「ちっ。手こずらせやがって。


この男何もんだ?」


私は倒れたキョウスケの脇腹をつま先でつつき、ついでにごろりと横向けにさせた。


キョウスケのもとにしゃがみ込み、ジーンズの尻ポケットから財布を取り出す。


財布には免許証や学生証が入っていて



「鷹雄 響輔――――……」




鷹雄―――……?って‟あの”鷹雄か……?


なら説明もつくな。



「だがしかし、白虎のガキが何故ここに―――?」


だが考えても明確な答えなんて出てこなくて、結局諦めた。


考えても時間の無駄だ。


今はここを脱出するのが先決。


幸いにもここは病院だ。


散乱した医療機器の中に包帯やら消毒液やらを見つけて、私はそれらを手にとった。


着ていたシャツだけを脱ぎ、キャミソール一枚になると傷ついた腕に包帯を巻く。


それだけでも結構な時間を要したように思えて、イライラと口の端で包帯を切った。


応急処置だから、包帯からすぐに血がにじみ出てきたが、我慢できないほどでもない。


病院で良かった、と思いたいが―――病院じゃなきゃメスで傷つけられることもなかった。


何で私は病院なんかに居るんだ。


またも疑問が浮かび上がり、しかし考えてもその疑問は解消されることはなかった。