私が電話に耳を当てていると


「……っ…」


小さなうめき声が聞こえて、ふと振り返るとキョウスケの指先がぴくりと動いた。


「ちっ。しぶといヤツだぜ。まだ動けるとはな」


思わず悪態をつくと


『朔羅!やめろっ!!


響輔に何もするんじゃねぇ!!』


またも電話の向こうで声が聞こえたが―――私はその通話を






今度こそ切った。



それとほぼ同時だった。


すぐ背後に気配を感じて振り返ると、キョウスケが私に向かって注射器を振りかざしていた。


頭のどこか打ったのだろうか、乱れた前髪の隙間から血が流れている。


寸での差でキョウスケの攻撃を避けることはできたが、キョウスケの腕からは逃れることができなかった。


後ろからキョウスケの腕で首を絞められ、気道が詰まる。息苦しくなって短く息を吐いた。


「くっ…!」


「すみません、お嬢!お許しください!!こうするしかないんです」


キョウスケが高く掲げた注射器の針の先が鈍く光って、私は目を開いた。


「注射器の中身はブピカインです。麻酔薬なので死にはしません!」


ブピカインだと!?


くそっ!!