さっきメスで切られたときと非にならないぐらい強烈な痛みに襲われ、


「ぁああああぁああぁあああ!」


私は悲鳴を上げた。


「申し訳ございません、お嬢」


と背後で腕を捻りながらどこか苦しそうにキョウスケは呟く。


圧迫された傷口から血は止まるどころか益々出血したみたいで、白いリノリウムの床にぽたぽたと血の跡を落とす。


「くっ!!」


あたしは捻られた方の肘をつかってキョウスケの腹に一発埋めると、


「っつ!」


その手が緩んだ。


さらに体を反転させるように腰をねじると、左足で一発、さらには右足でもう一発とキョウスケの顔めがけて蹴りを入れると


その計三発はキョウスケの腹や首、顔に明確に的中してキョウスケが後ろへ吹っ飛んだ。


ガシャガシャッ…ン!!


キョウスケの体は、医療用の道具が置いてあるワゴンにぶつかりワゴンは横倒し、医療用器具は床に転がって派手な音を立てた。


キョウスケはぐったりと首を項垂れ、両足を投げ出しぴくりとも動かない。


「…っく……」


私は痛む腕を押さえて何とか立ち上がると、そろりとケータイに手を伸ばした。